雨の日も、晴れ男。
この物語は、小さな神様たちのいたずらから、アレックスという男の人生が狂わされていくというものだ。もちろんいたずらといっても、かわいいものではない。彼はリストラにあったり、詐欺にあったり、妻や子供に見離されたりと思いつく限りの不幸と呼ばれるような出来事に見舞われる。しかし、彼は不幸からも希望を見出して、とても奇をてらった方法で乗り越えていく。
あなたの周りには「なんでこんなに前向きなの?」と思わされるような人はいるのだろうか。
この作品はそのような男の1日である。
私は「雨の日に読みたい本」というポップにひとめぼれして、この本を購入した。
物語の中には「雨」という単語は全く出てこないが、「雨の日=気分の冴えない憂鬱な日」に読むのにはぴったりの1冊だと思う。
友人にこの本を勧めると、まず本のタイトルと著者を見て「知らないなあ」と言われることが多かった。あまり知られていないみたいだが、水野敬也の著書の1つには「夢をかなえるゾウ」という110万部を売り上げた大ヒット作があり、ドラマ化もされている。
私が考えるこの本の魅力は、2つある。
1つ目は、「軽快で面白い」ことである。
どんなにいいことが書いてあっても、読まれなければ誰の心にも響かない。この本は、一文も短く、ページ数も挿絵が入って234ページなので、とても読みやすい。非現実なことだとしても、舞台がロンドンなので、別の世界のこととして受け入れやすい。また、日本の文化を利用して様々な困難を乗り越えていくアレックスに思わず吹き出してしまう。ちなみに私が好きなエピソードは夕方4時に起こった詐欺の話である。
2つ目は、「教訓がある」ことである。
筆者が主張したかったことは、「出来事はあくまで出来事にすぎない」ということだ。不幸か幸かを決めるのはあくまで私たち自身の気の持ちようであり、状況を変えていくのも私たちなのだということだ。また、個人的に教訓になったのは「行為は氷山の一角」だということだ。この本を読んだことで、表面的な行為で人を判断してしまいがちな自分に気づくことができた。
最後に、個人的にこの本は楽しみながら読める「自己啓発小説」であると言えると思う。本嫌いな人にも是非読んでほしい。